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灰色にくすんだ空。
音も無く、蜘蛛の糸のような雨が降り続ける。
窓を開ければ、空調が整備された室内に、
生暖かい空気が入り込み、
肌に纏わり付いてくる。
シン…と静まり返っている室内にこだまする雨音。
晴れる様子の無い空を見上げて、溜息を一つ。
~♪
ベッドの上に投げ出されたままのケータイが着信を告げる。
誰だよいったい…。
一瞬面倒だと思いつつも、ケータイを手にとって着信相手を確認する。
!?
慌てて通話ボタンを押す。
「チャンミ!?」
『…今何処に居ますか』
「え?あ?今?今家…」
数ヶ月ぶりに聞いた恋人の声。
…なのに、いきなりのぶっきらぼう。
『…窓の外見てください』
「え…?」
開け放たれたままの窓に、もう一度視線を戻す。
広がるのは灰色の雲に覆われた空。
ああ、そっか。
窓の外に居たらアイツ浮いてる事になるよな。
思わず自嘲しつつ、慌てて窓から身を乗り出して下を見る。
「…ッッ!!チャンミッッッ!?」
紛れも無い。
傘を差し、下から見上げてくる強い眼差し。
ケータイを耳に当てたまま、部屋を飛び出した。
「っっ!?な、何でっっ?!」
『…居たら悪いんですか?』
妙に落ち着いた声音が耳を擽る。
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