アメノヒノキオク

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  瞬間。 弾かれたように溢れ出す涙。 雨とも涙ともつかない。 頬を伝い流れ落ちる熱い雫。 「…チャンミ…ッ」   照れたように俯く顔。 その頬を両手で挟み、上向かせ、その唇にキスを落とした。 それは雨が連れて来た幻ではなく。 それは熱い血の通った紛れも無い現実。 「…ふ…んぁ…」 無我夢中になりながら、その甘い唇を貪った。 キスの甘さが、会えなかった時間の空白を埋めていく。 雨に濡れそぼることも、外だということも忘れてて。 まだまだ足りないけど、チャンミが服の裾を引っ張って制止してきたから、 やむを得ず自分落ち着かせて、キスを止めた。 「…はぁ…少しは加減してくださいよ」 息をつくチャンミ。 「…ゴメン………なぁ、チャンミ」 「…はい?」 「今みんな出掛けてるんだ。俺一人。…コーヒーぐらいは入れられるから」 多分。 小学生の方がまともな文章を喋ると思う。 「……少しなら…」 頬を紅く染めて、小さく呟くチャンミ。 少しでも良い。 傍に居ることが出来るなら。 俺はブンブンと頭を縦に振った。 チャンミの手を掴んだ。 その手は少し冷たくて。 でもしっかりと握り返してきた。 その温もりだけで、二人の距離は戻ったような気がした。 -END-
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