―きっかけ―

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「遅刻!……ヤバイ!ヤバイ!」 私は都内の公立中学校に通う、“阿部まゆみ”。中学3年の冬にして、親の事情で九州からこっちに転入。短期間の通学になるけども………っていうかァーッ!今はそれどころではなーいッ!! はぁーはぁー… 「なんとか間に合ったわ」 冬(12月)と言えどもさすがに全速力で走ってくれば、汗だくになる。タオルで汗を抑えながら、いざ教室へ。 ガラガラ―― 張りつめた空気 クラス中からの冷たい視線。 教卓には、定年間際といえそうな風貌の男性教師。 「阿部さん。遅刻だよ……。廊下に立ってなさい」 男性教師は冷たくそう言った。 朝のHR(ホームルーム)も終わり、まだ立たされていた私の所に、男子生徒がやってきた。 「さっき、佐藤が“阿部”って呼んでたよなァー?お前、阿部っていうのかァ?」 「そうだけど…」 私に絡んでくるなと思いながらも、丁重に答えを返した。 「阿部。俺はこのクラスの学級委員長。柏木だ。宜しくな」 そういうと、柏木は手を差しのべてきた。応えない訳にもいけないので…… ギュッ 柏木は手汗をかく体質らしい。 1分ほど経って、佐藤という担任が私の目の前にきた。どうやら説教をするらしい。 「反省したか?」 ………… 「はい」 ひとこま間を置いて返事を返すと、 「ワシはな。今まで転入生にも厳しく最初から指導してきたんだ。覚えておけ」 そう言うと担任はどこかへ去って行ってしまった。
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