『彼の力』

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とりあえず先に言っておこう。 ごめんなさい。 小見筑子(こみ つくこ)。高三。文芸部部長。 前述の通り、見た目は非常に素晴らしい。 黒く長い艶のある髪。穏和そうな黒の大きな眼。それらをおさめる白い肌。さらにスラリと長い手足と、スタイルもいい。 まぁ世界三大美女は言い過ぎにしても、うちの学校では確実に一番だろう。 ……もっとも、他の点に難があるけれど。 「……なんすか、ヤムチャって」 「え? ドラゴンボールは基本でしょ? 学校で習わなかった?」 よく見ると、その手に握られた本は「ドラゴンボール」の42巻。 「いつからこの国は教科書にドラゴンボールが載るようになったんすか?」 マンガ大国日本とはいえ、いくらなんでもそんな、 「載ってるわよ? 美術の教科書に」 「まじすか」 「ええ。ちなみに国語の教科書にはポケモンのマンガが載ったりもしてるわよ」 日本の暴走を再認識した。 「っと、そんなことより、ヤムチャなんだけど」 部長はまた思い出したように話を戻す。 「サイバイマンに瞬殺されるかませキャラに何をそんな……」 「あら、知ってるじゃない」 そりゃまぁ……有名キャラではありますし。 ヤムチャ。ドラゴンボールのキャラクターの一人。悟空の仲間。 「でも出番あったの最初だけで、後半ホントに殺されるだけでしょう? 最強の地球人って話でも、クリリンって言う人がほとんど……」 「そう、そこよ!」 小見部長の目がキラキラと光り出した。あぁ……無駄な光……。
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