プロローグ

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──  四月には綺麗に咲いていたはずの桜は、気付かない内に落ちてしまったらしく、その当時見る者の目を輝かせていた桜並木も、五月の半ばになれば目をやる程の美しさもない、ありふれた木々と化していた。  はぁ、とため息ひとつ。この『元』桜並木の道を歩いている、登校中の俺こと竹下直人は、うんざりしていた。  何も変わらない、日々の学校生活に、だ。  何か面白いことはないかと淡い期待を込めていつも登校しているけれども、高校二年生になっても未だ期待に応えるような事が起きたことはない。  と、突然後ろから、頭をど突かれた。痛い! 「よぉ直人。朝から顔死んでんぞ、ほらスマイルスマイル!」  そういえば、二年生になって少しだけ変化はあったか。新しいクラスになって、何人かの男友達ができた。  いきなりど突いてきたこのバカは、その数人の中でも、ここ最近で急激に仲良くなった奴。名前は『高津慎也』。  仲良くなったとは言っても、こんな朝からバイオレンスな挨拶を許した覚えはない。ヘラヘラ笑いやがって。 「痛い。普通、朝の挨拶はおはようだろ、超暴力的な挨拶だなお前のは」  睨みながら、高津に唸る。 「おお、悪い悪い。一緒に登校しようぜ」
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