『MIR-α 117』

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 後に工作員が捕らえられ、先の事件はハモニート王国による強奪であったことが発覚する。  その後程なくミラは誕生した。優れた“リオ”の遺伝子を引き継ぐ形をとって。  リオが斬った“ミラ”は今回をあわせて六体。この数も、戦局を語るうえでは露ほどの意味もなさない。今この瞬間も、数千の妹たちが共和国兵の骸の山を築いているのだから。  再び晴天を仰ぐリオの眼に、流すための涙はない。 「神よ、我々は哀しみを生み出す存在でしかない。……ではなぜその我々に哀しむ心が必要なのですか? なぜ、……我々はこれ程までに哀しまねばならぬのですか?」  力なく握られた手からサーベルが滑り落ちる。  リオの嘆きに飽くまでも口をつぐむ天上のもと、最後の一撃を受けた肩口が鈍色の光を放っていた。 〈終〉
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