A love robber

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 真っ昼間に目が覚めたので、バイトに遅れまいと急いではいた。それでもあのとき僕は、彼女がいつもの公園でいつものように、近所の小さな子供たちとはしゃいでいたことを覚えている。  しかしまさか、こんな時間までずっとこの場所にいたというのだろうか。 「あの、お隣さん……ですよね?」  すべり台の上り階段に腰かけている彼女に、思いきって声をかけた。ひざにうずめられていた顔が上げられる。 「あなたはたしか、えっと……お隣の国生さん?」  お互い同じアパートの住人なのだが、会話もしたことがない顔見知りでしかないのに、彼女は僕の名前を覚えてくれていた。 「もう夜遅いですよ。身内とけんかでもしたんですか」  日付が変わるのと同時に僕のバイトは終わる。遅くないわけはない。  彼女は左手に見えるブランコの奥を指差した。あの方向には、不動産屋の建物の死角になっていてここからは見えないが、僕らのアパートがある。
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