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靴だけがずいぶんと履き古されたスニーカーなのは、きっと子供たちと遊ぶためなのだろう。
どうぞ、と開封してあげたおにぎりを手渡した。
すると、彼女はよっぽどお腹をすかせていたようだ。彼女のがっつきようといったら百獣の王もびっくりだろう。息をする間もなく高菜のおにぎりが彼女の小さな口に詰め込まれていく。
すがすがしささえ感じさせる豪快な食べっぷりに、ついつい見とれてしまう。
長い髪に隠されてその表情を見ることはできないが、口をもぐもぐさせながらも、落ち着きを取り戻した彼女の背中がこきざみに震えていることに気がついた。
もしやのどに詰まらせたのではと思い、飲み物を持っていないことにあせっていると、
「おいしぃ」
ぽたり、とおにぎりを握りしめる手に一粒の雫が落ちた。
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