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戦のさなかにありながら、ミラの眼に映るものはしかし、前方に群がる敵兵ではなかった。
彼女の薄れゆく意識をつなぎとめるのは、胸を満たすある者への想いのみ。
彼女が立ちあがり続ける理由、それは失った戦友のためではなく、ましてや彼女の祖国ハモニート王国のためですらない。
ただただ戦を生きぬきいま一度、愛する男の胸にいだかれるために。
ミラは手にした剣に貼りつく血糊をはらうこともせず、咆哮とともに疾走する。
所変わり、攻め入るハモニート王国に対するのは、陸続きの隣国、アモン共和国である。
アモン共和国軍第八連隊総指揮官、リオ=ガーデンローズはさえ渡る晴天を仰ぎひとりごちる。
「我が共和国が墜ちるこの日に、神は涙も流してはくださらぬか……」
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