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「あ? 知らね。それより、こいつ処女か」
「知らないわよそんなの、わたしにきかれても」
ひどーいと言いながら母は口をとがらせている。
私の手は止まっていた。顔にこそ出していないが、心の中では顔面蒼白だ。こいつは私の体を狙っているのだろうか。こんな奴に私は汚されてしまうのだろうか。それだけは絶対に嫌だ。
「処女ならこれくらいの顔でもそこそこの金にはなるからな。俺なら逆に金を積まれてもゴメンだけど」
よかった。安堵のため息が出た。こんな小物に犯されるくらいなら、その辺の浮浪者どもにまわされたほうがまだましだ。再び私はリンゴの皮をむき始める。
「で、どうなんだよ。おい、……おい!」
――痛っ
背中を蹴られ、私は指を切った。結構深く切ってしまったけれど、やはり顔には出ない。
「と、とろくせえガキだな、おめーは、親に似て」
強がっていても目が泳いでいる。
母が私の傷をみた。そして、鼻で笑った。
ヤクチューは私の傷にビビったことを余裕の母に悟られまいとしたのか、今度はさっきよりも強く私を蹴った。
母がうずくまる私をみた。そして、今度は声を上げて笑った。
――ひゅん
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