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ミラの目はうつろだった。彼女はいっそ、まどろみに身をまかせてしまいたかった。
そっと、光を失って久しい左の眼に触れてみる。まだあの人の温もりが残っている。エリア内に残る敵はあと一人。――いける。
女兵士の眼差しに一刀両断の決意をみてとったリオは、手に掛けたサーベルを勢いよく引きぬいた。
抜き身の刀身は強い日差しのもとにありながらも、あたかもそこだけ闇を切り取ったかのような漆黒だった。
にわかにミラは、その隻眼に映る世界が漆黒の刃に吸い込まれていくような錯覚をおぼえた。
「こ、こいつは……黒獅子!!」
闇雲に踏み出そうとしていた自らの浅はかさにミラは恐怖した。
純白の軍服をまとう壮齢の男は、共和国の英雄リオ=ガーデンローズ、俗称“黒獅子”。
ミラの祖国ハモニート王国内ですらその名を知らぬ者はない。
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