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ミラが背にしているものは、自らがただ一人の猛襲によって築き上げた、アモン共和国兵の骸の山。
だが、それらも彼女を慢心させることはない。
彼女は対峙する黒獅子が、およそ自分の実力でどうにかできる相手ではないことを悟っていた。
ましてや肉体の限界はとうに超えている。四肢はぬかるみに浸かっているかのように重い。
伝説級を相手にする以上、初太刀をしくじれば命はないものと思わなければならない。
しかし、このような絶望的な状況下にありながらも、ミラの思考はまこと冷静を極めた。
呼吸に従いかすかに上下するリオの肩。
その動きをさながら獲物を狙いさだめた鷹のように、鋭い眼光で注視するミラ。
相手が息を吸う瞬間、そこにわずかながらの隙が生まれる。一撃で仕留めるためにはこの機会をのぞいて他にはない。
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