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二つの刃が交差する。
先をとったミラの一撃がリオをとらえた。
が、遅かった。
なぜならリオがとったのはミラのそのまたさきをいく先々の先。
彼女の全霊の刃はリオの肩口をかすめるのみに終わり、瞬時に振り下ろされた漆黒の刃によってミラは二つに断たれた。
「夢の終わりは常にはかなく時に残酷ですらある。偽りの愛に焦がれたレディよ、とこしえの眠りの中で夢路へおもむけ」
ミラの亡骸に向けられたリオの声音は慈愛に満ちていた。
リオは知っている。彼女の生涯とは、ひとときの白昼の夢にすぎないものだということを。
なぜならば、彼は目醒めたのだ。生涯という名の白昼の夢から。
だから知っている。生きながらにして自らの死を視る感触がいかなるものであるのかを。
「ないのだ……」
ミラの想い人など、いない。
「ガーデンローズ家など、どこにもないのだ……」
彼女の切断面から垣間みえるもの、それは人の間に生まれたものではあり得ない。彼女は人によって“造られた”ものだった。
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