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「知らないのは当たり前かもね」と彼女は言った。僕はその言葉になにを返すわけでもない。
ここに来たのは、ほんのサボりのつもりだった。なにもなくなったこの世界で、なにを勉強しろというのだろうか。僕にはそれがわからなくてゆっくりと上りきった階段の向こう側に彼女がいた、それだけのこと。
「君はなんでそこにいるの?」
「知りたいの?」
「いや」
「ならいいじゃない」
「死にたがり?」
「そんなんじゃない」
彼女はこちらを向かず、ただ空を仰ぎながら危なっかしく立っていた。
僕は、なんでここに来たんだろう。死にたいわけじゃないなら、なんでそこにいるんだろう。疑問だらけだった。でもこれは授業じゃ答えを見出だせない。僕がここに来て、何故か知らないクラスメイトと話していて、彼女は僕を知っているようだった。
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