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銃声が静まった美術館……横たわったマサルを優しい眼差しで見下ろしながら、アイラムは携帯電話を掛ける。
「……こちらはMMGプロト1アイラムコア。予定通り旧地区Cブロック美術館へ回収要請。他一体要回収の遺体アリ」
機械的に連絡を終えるとマサルの亡骸を優しく膝に乗せる。
「あなたの考えも私には見えている事はわかっていたハズなのに……ありがとうパパ」
アイラムはマサルに静かなくちづけをした。
「あなたに後悔はさせない。そのためにこれを見せてくれたのでしょ?」
アイラムは存在してから初めて涙を流した。
飾られている写真の恐竜達と同じように寄り添う2人を、月は優しく見下ろしている……
****
「……これも計画通りだったと?」
ラボの研究員が男に話し掛ける。
「途中まではな。まさか自我を持つまでになるとは思わなかったが、まぁ想定の範囲だがね」
ガラスの容器に満たされた薄緑色の液体に浮かび、無数の配線で繋がれたアイラムを愛おしげに見つめている。
「それはどちらに対しての……」
研究員は不思議そうに尋ねた。
「2人共だよ……アイラムも私のクローンも、まさかとは思ったが」
ラボの最高責任者であるマサル・ヒロナガ博士が苦笑いで答える。
アイラムの隣の容器には、人工心肺に繋がれたマサルのクローンがアイラム同様に浮かんでいる。
「お前も恋をしたんだなぁ。望み通りアイラムと繋げてやったからな。神の手助けをしてやってくれ」
……マザールームの明かりを落とし、研究員と博士は部屋を後にした。
ほのかに緑色に光る2つの容器の中の2人……
どことなく幸せそうな表情にも見えた……
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