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「アイ、戻るならまだ戻れるよ」
彼女は全てを見通しているような静かな笑顔で見つめてくれている。
「あなたが決めてくれた事でしょ?私にはそれが嬉しいのよ。マサル」
まさに神をも恐れない愚行なのだろう。
でも迷いはない。
「君にどうしても見せたい景色があるから……このまま組織の縋りモノの神としての君を見たくなかったから……」
「ありがとう。……でも私はここでは生きていけない、いいえ、生きられないのよ」
「わかってる、それも解ってるんだ……」
……そう、神に等しい存在として人類が無から造り出した彼女が、ラボ以外で生きていられないのはもちろん解っている。
マザーCPUであるバイオコンピューターから切り離された彼女は、下界であるこの現実の世界では自らの生命維持すら出来ないのだから。
数時間から数日間というところか……
――――
息詰まった人類が、生物としての指針を求め造りあげた存在。
人の形を模したまがい物の神……アイラム。
――――
そしてそのアイラムシステムの立案者である僕が、今まさに神殺しをしてしまうかもしれない状況にいる。
仕方がない、僕は恋をしてしまったのだから。
「間違いに気付いたんだ……君が人格を持った時から」
「私も……マサルに名前を呼んでもらえて自我を意識出来たの。人の部分を持てたのよ」
……それはそうさ。君は僕が造ったのだから。
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