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日も落ちかけてきた頃、僕らは目的の場所へとたどり着いた。
「……此処だよ。此処で君は僕の中に生まれたんだ」
「ここ?……素敵」
……先の第3次大戦により無人と化したブロック。
半分は崩れ落ちてしまっている美術館の奥にその写真はあった。
1968年、今から60年以上前に南米大陸で発見された恐竜の化石のそれだ。
「この写真を見て、人が争う事がくだらなく感じたんだ。そして僕は君を望んだんだ……造りモノでも人を導いてくれる絶対的な存在を」
彼女はその写真をただ見つめている。
「でもね、やっぱりこの写真を見て思う……君一人に背負わせちゃいけなかったんだって」
……寄り添うように写っている2体の恐竜の化石。
詳しくない者にもはっきりと判る、草食と肉食の恐竜が、まるで抱き合うかのようにそのまま化石として発見された時の写真だ。
「君はもう存在している。だからこれから先、君は君の思うままに進めばいい。」
「うん。私はアイラム。MARIAの名前を託された存在……それは理解しているわ」
これでいい。
僕は彼女に携帯電話と拳銃を手渡した。
「君の思うままに」
「……うん、ありがとう。きっとこのひと時の事は忘れない」
彼女……アイラムは今までで一番優しげな、慈愛に満ちた表情で僕を見つめている。
そして、拳銃を構え銃口をそっと僕の左胸にあてると引き金を引いた……
……遠ざかる意識の中で、思っていた通りの結末に僕は幸せを感じた……
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