‐鏡‐

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 俺は何も言えなくなって、そうですよねと呟きまた沈黙する。  ガタン、ガタン。  二時間かけて自宅と学校の道程を走る電車は各駅停車でゆっくりと進む。終点まであと二十分弱、最初は満員に近かった車内も今は静かだ。美人は景色に飽きたのか、つまらなさそうに俯いている。  俺とは違う、かもしれない。けどもしかしたらわかるのかもしれない。  思い出したんだ。  終点までの長い道程、人もまばらになってく車内。外はもう暗くて、街灯の反射でちらちら光る水田は毎日変わり映えしなくて。  この女の人が聞けばガキが生意気に、とか思われるかもしれないけど、解決できない問題やこれから考えなければならない事、それと……悲しい事が俺の器を超えて存在していて。  ある時それらを全部放棄すると決めたら急にやることが無くなってしまった。  それら全てを鬱陶しいとすら思っていたのに実際に失ってみるととても退屈で寂しい。  初めて自覚したあの時、窓に映った表情に俺は驚いたんだ。
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