‐鏡‐

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   俺が降りる駅まであと三分。鞄から数学のノートとボールペンを取り出し、一番最後のページに携帯番号とメールアドレスを書いて破った。走り書きだが、多分読めない程ではない。 「今度会ったらまたナンパしますから」  ノートの切れ端を美人の鞄に滑り込ませ、出した物をしまいながら立ち上がった。この人がどこまで行くのかは知らないけど、例え終点で降りるとしても三駅。また会える可能性は充分だ。  ってか、会いたい。  だからこその連絡先なわけで。  俺はそれから二週間、毎日同じ電車で彼女の姿を探す事になる。連絡も当たり前の様に来る事はない。きっと俺の個人情報は飴の包みとでも一緒に捨てられたんだろう。別にいい、最初から期待はほんの少ししかしていなかったから。  片道二時間を過ごす退屈凌ぎになるだけだ。諦めてる筈なのに無意識に探してしまう現状も時が解決する。  甘酸っぱいままで終わる、結局はただの一目惚れだったんだ。  
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