1人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
俺が降りる駅まであと三分。鞄から数学のノートとボールペンを取り出し、一番最後のページに携帯番号とメールアドレスを書いて破った。走り書きだが、多分読めない程ではない。
「今度会ったらまたナンパしますから」
ノートの切れ端を美人の鞄に滑り込ませ、出した物をしまいながら立ち上がった。この人がどこまで行くのかは知らないけど、例え終点で降りるとしても三駅。また会える可能性は充分だ。
ってか、会いたい。
だからこその連絡先なわけで。
俺はそれから二週間、毎日同じ電車で彼女の姿を探す事になる。連絡も当たり前の様に来る事はない。きっと俺の個人情報は飴の包みとでも一緒に捨てられたんだろう。別にいい、最初から期待はほんの少ししかしていなかったから。
片道二時間を過ごす退屈凌ぎになるだけだ。諦めてる筈なのに無意識に探してしまう現状も時が解決する。
甘酸っぱいままで終わる、結局はただの一目惚れだったんだ。
最初のコメントを投稿しよう!