‐声‐

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 自慢じゃないが、俺はモテる。社交性もあるから友達も多い方だった。スポーツも人並み以上には出来るし、成績だって常に上位に食い込んでいる文武両道っぷり。教師からの信頼も厚い。  ここまで語っておいて「自慢じゃない」と言うのは嫌味になるだろう。実際、少し前まではちょっとした自慢だった。まあ、相応の努力はしていたが。  そんな男女にモテモテな俺の携帯電話には毎日何件ものメールと着信があった。使用頻度の高さと乱暴な扱いによってボロボロになってしまったシルバーと黒のシンプルな携帯電話。流行りの曲を着信音に設定したそれは忙しなく働いた。  それが、今は大人しいものだ。  丸一週間鳴らないなんて珍しい事じゃない。最後に鳴ったのは幼なじみからの電話だった。それも他愛ない用事だったので一分もせずに終わった。  どうせ鳴らないんだし、とマナーモードに設定したまま鞄に放置したのは三日間程だろうか。思い出したように携帯を開くと、いつの間にやら電池が無くなっていた。
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