Soliloquy

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■■■■■■ 心霊写真 ■■■■■■ 心霊写真などという現象が取り沙汰されるようになったのは 一体いつ頃からなのでしょうか。 私には知る由もありませんが、 少なくとも20年近く昔、 私の通っていた小学校ではすでにオカルトブームなるものが存在し、 生徒達は花子さんや赤マントの話、 こっくりさん遊びなど様々な噂を聞きつけては、 皆それらに興じていました。 私が当時仲良しだったA子ちゃんに、 心霊写真集なるものを貸してもらったのも丁度その頃です。 苦痛に歪む顔…に見えなくもない壁の染み。 怨念の篭った女の姿…に見えなくもない焚火の炎。 それらの写真は、まだ幼かった私でさえも少しばかり期待はずれで落胆させる内容、かに思えました。 しかし本を閉じたあと、 一抹の違和感が私に残るのです。 その違和感の正体を私は考え続けました。 (そうだ) (この表紙の写真だ) その本の表紙には、赤い水着の女の子がひとり。 海水浴に来ているのでしょう、 浜を背景に浮き袋を抱いてにこやかに笑う彼女の頭に、 包丁のようなものがささっている。 と、いうものでした。 この写真自体は 特にインパクトの強いものでもないのですが、 表紙を飾る肝心のこの写真が、 本の中に納められてないようなのです。 私はもう一度、 最初のページからその写真を探し始めることにしました。 半分ばかり読み進めた頃でしょうか。 私の耳元に生暖かい感触と共に 「探すな」 という声がしました。
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