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……………28日後……………
「あぁ…………腹……減ったなぁ………」
隣に座る健吾が生気のない声で呟く。
俺は、テスト中は私語禁止と言う事もあり「あぁ、そうだな…」と小声で返した。
本当は健吾を気遣う為に、アイツの方を見て話したかったのだが、カンニングと見なされる行為は厳しい処罰を受けてしまうので、俺は一瞬だけ健吾をチラと見たが、健吾はテストを受ける様子もなく、机に突っ伏したままだ……。
マジ大丈夫かよアイツ………確か、もう10日以上は食いモン食ってない筈だぜ!?
クソみてぇな制度のせいでさ……!
健吾が突っ伏したその姿に、俺はさほど遠くない記憶が蘇った。
肌をも焦がす真夏の日差しが鬱陶しいと感じ、健吾と香織が何時もの様に言い争う。
瀬尾が突拍子もない事を言ってクラス中が笑っていたあの時……今では懐かしささえ感じる。
あの日から28日………。
いつもの教室から移動し、俺達が今いるこの教室は、そんな夏の日差しが差し込む窓もなく、唯一の出入口は時折入ってくる清掃員らしい…………いや、ただ単に俺達が清掃員と勝手に呼んでいるだけで、実際には清掃員かどうかさえ分からない。
青濃く暗い作業服を着て同色の帽子を深く被り、顔など到底確認出来ないガスマスクの様な物を装着した異様な出で立ち。
いくら喋りかけても一切答える事は無い、物言わぬ人形みたいな奴等。
そして彼等が教室に入ってくる理由とは………
クラスメイトの誰かが死亡し、物言わぬ人形となった亡骸を処理する時のみ、唯一の出入口から入ってくるのだ。
ただ業務的に死体処理をする為に……
故に俺達は清掃員と呼ぶ。
ん?ならその清掃員が入って来た時に捕獲し、脱出を試みたら良いじゃないかだって!?
やってみたさ………当然。
結果クラスメイトが2人死んだ。
1人は呆気なく、もう1人は苦しそうな叫び声を上げ、のたうち回りながら………ね。
やりきれない思いと半ば諦めた思いが入り混じった表情で、純は忌々しくクラスメイトの命を簡単に奪ったソレを見つめた。
刹那。各人の机に設置されたタッチパネル式モニターの左上に、ニュース速報形式のお知らせが点灯表示される。
この左上に表示されたニュース速報が成す意味は………
クラスメイトの死。
点灯表示に気付いた純は
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