餓鬼講習

10/11
38人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
……………28日前…………… どうやら夏休みについての説明があるらしく、いつも授業を受けていた教室から別の教室へと移動する三崎達クラス一同。 移動先の教室は、約半年間の工期が終わり、つい先日に完成した教室。 コンピュータールーム。 噂では、最新鋭のコンピューターを導入した教室と聞いていた純達ではあるが、どうやら今はクラス中が、その噂より夏休みの宿題の方が気になって仕方ないといった様子で、学級委員長の菊地が頻りに「静かにして下さい!」と言い誘導するも、一向に静かになる気配もなく、ざわざわと騒がしい集団はコンピュータールームに到着した。 「うぉーー!涼しーーーぃ!!マジ天国だぜこの教室!サイコー!!」 先程まで灼熱の太陽光に焼かれ、グダグタになっていた健吾がオーバーに叫ぶ。 「うわっ……ホンット涼しいな。クーラーとかマジあり得なくね!?」 健吾ほどでは無かったが、やはり夏のジメジメとした暑苦しい教室に嫌気をさしていた純も、思わずクーラーの効いた教室に入ると笑顔がこぼれる。 「ッんだよ~~。クーラー効いた教室あんだったら、サッサとコッチに移動させろよな~!なぁ?純」 三崎は「だよな~!」と笑顔で原田に返す。 流石に完成したばかりと言う事もあり、クリーム色を基調とした室内は真新しく、机にはグレー色の薄型パソコンとペンタブレット、そしてマウスらしき物が綺麗に並べられていた。 それらを見た三崎は、つい「すげーな……この教室」と呟く。 どうやら他のクラスメイトも三崎達と同意見らしく、涼しいだの凄いだのと口々に開く。 その上、夏休み前で最後のホームルームがクーラーの効いた最新鋭の教室だと言う事が相乗効果となり、更にテンションが高くなっている状態である。 そして、クラスメイトの皆が更にテンションを上げる理由………… 今からこの教室で説明されるであろう、夏休みの宿題。 そう、夏休み期間中たった一つだけの宿題が、この教室で説明されるらしいのだ。 そんな、テンション高く騒々しさ極まりない群衆を静めるかの如く、パステルイエローのサマースーツを着て、縁がオレンジ色の眼鏡を掛けた女性教師が声高く叫んだ。 「ハイ!みんなクーラーの効いた教室でテンション上がるのも無理ないけど、静かにしてね~!」 通称「キヨちゃん」 三崎達クラスの担任、柏木清美だ。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!