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人を諭す様な、おっとりとした喋り方で、毎度毎度じゃじゃ馬浪花娘の暴走を止めに入るのが、俺の前に座る桜川真由美の役目と大体決まっている。
何よりも争う事を好まない優しい性格で、香織や健吾とは真逆の、目立つ事を最も苦手とするみたいだが、残念ながら、その容姿がソレを拒んでいる。
いや、男子としては全く残念ではないんだけどね!
長く艶やかな黒髪に、切れ長の柔かいタレ目。
スラリと伸びた手足にスリムな身体は、まるで雑誌のモデルと見間違えるほどだ。
そして何より中学生離れした豊満な乳房。
思春期男子には、実に目の保養…いやいや、目のやり場に困る。
ここまで揃い踏みしてる桜川さんだから目立たない筈がなく、当然男女ともに人気が高い。
中には、その容姿に嫉妬してる奴もいるみたいだが…。
なぜ喧嘩っ早く性格が真逆の香織と親友なのかは、学校の七不思議に挙げられる程だ。
「ねぇ三崎くぅん…。三崎君からも何か言ってよぉ~」
茶犬と馬が睨み合って、今にも発火しそうな熱視線の火花に困り果て、そう言いながら俺の方へと頭を傾げ振り返る桜川さんに「えっ!?あぁ、うん…」と曖昧な返事をし、俺はあわてて桜川さんの視線から目を反らした。
そんな困った顔して俺の方見んなよ……くそっ!可愛いじゃねぇか!!
うん……見ての通り、俺は桜川さんの事が好きだ。
まぁ、クラスにいる大半の男子は桜川さんの事が好きとか憧れとか特別な気持ち持ってるんだろな…。
他のクラスでもコイツん事が好きだと言ってたヤツいたし…ハァ……何だかなぁ~。
「ねぇ三崎くぅん?…ちょっと聞いてるのかなぁ?」
「えっ!?あぁゴメン!…ちょいお前達いい加減にしろよ!!桜川さん困ってんじゃん!!」
チクショウ…何か締まんねぇな俺…
「うっせえ純!元々この男女が喧嘩ふっかけて来たんだ!ほっとけ!!」
「せや純!ほっといてんかぁ!アンタいちいちうっさいねん!!」
お前達なんでこんな時には、いつも意気投合すんだよ…ハァ…。
俺は大きな溜め息をつきながら桜川さんの方をチラ見したが、桜川さんは相変わらずオロオロしながら二人……いや、殺意むき出しの獣同士が織り成す威嚇を、相変わらず困り果てた顔で見ている。
うわっ……クラスの皆がコッチ見てる…参ったな…また注目の的かよ……。
クラスの中には「また二人がやってんのか…」と呆れ顔でニヤニヤしてるクラスメイトもいた。
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