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そんな獣達が目で威嚇し合っている姿を、俺もクラスメイトと同じく呆れ諦めながら眺めていると、明らかに前方から感じる視線…
「お願い。二人を止めて…」と訴えかける無言の視線。
まるで刺す様な視線の方向をチラと見ると、桜川さんの目には、新緑の葉に纏う朝露が如く泪の薄化粧。
これは………反則だろ。
「涙は女の武器」なんて良く言われるが、全くもって………その通りじゃん。
それが桜川さんだと、武器なんて甘っちょろいモンじゃなく、むしろ兵器だ。
特に、自分が好きな女の子の涙なんてモンは、核兵器と同等の破壊力だぞマジで…。
俺の胸は、桜川さんに聞こえてしまうんじゃないかと思ってしまうぐらい、その可愛過ぎる涙顔を見て、一瞬のうちに高鳴ってしまった。
此処で桜川さんの期待に応えなきゃ男がすたる!
そう思った俺は、先ほどの呆れ諦めた情けない顔から、まるで戦地に向かう兵士かの如く表情を引き締めて、今まさに熾烈な闘いを初めようとせん猛獣に向かい、獅子の咆哮を放つ為に勢いよく椅子から立ち上がった!
「お前ら!い…」
「賑やかだねぇ~~お二人さ~ん。夏休み前でテンション上がんのも分かっけどさぁ~。ちと夏祭りするにゃ~時期早いんじゃねの?それとも得意の夫婦喧嘩ってか!?」
香織の机にトンッと軽く片手を突き、まさに一触即発状態の獣達に割って入り、ニヒルな笑みを浮かべながら軽く冗談を飛ばす優男。
そんなコイツの名前は瀬尾雅人。
「人生、適度にテキトー」がモットーらしく、誰の下にも着かず誰にも媚びず、気の向くままに行動するその姿は、若干15歳にして人生を舐め切ってる様にも見えるが…キメる所はキメると言う、何とも憎たらしい奴だ。
その性格も印象的だが、更に印象付けるのが学年でも一位二位を争う高身長と、中学生には見えない大人びた容姿だろう。
少し目尻の下がった色気のある目、その横にある泣きボクロが更に妖艶さを醸し出し、男の俺でも時折ドキッとしてしまう事も……
いや!なんつーかその、特別な意識ってのじゃなくて、男としての魅力って言うかその……あぁ!もう!!
とにかく俺は桜川さんの事が好きな普通の男子で、瀬尾は色男って事!そういう事!!
ふぅ……しかし瀬尾が言った夫婦喧嘩ってのはマズいんじゃないかな…。
こんな言葉を冗談と受け止めて軽く流せない輩が…
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