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また……誰か死んだか。と心の中で呟くが、人間の慣れとは恐ろしい物で、何かと多感な思春期世代ではあるが、今は然程クラスメイトの死に対して悲しみや怒り、恐怖感が湧いて来ない。
感覚が麻痺してしまう程、短期間で人の死を見過ぎてしまったのだった。
中には、精神的過重で半ば壊れてしまった様なクラスメイトもいるが………。
どうやら他のクラスメイトも純と同じ様に死に対しての感覚が麻痺しているらしく、先程のニュース速報を大して気に掛ける素振りも見せていない。
中には表示画面を触り死亡ニュースを確認し、軽く溜め息を吐く者。
小さな悲鳴の様な声を上げる者。
人の不幸を嘲笑うかの如くニヤリと歪んだ笑みを浮かべるている者。
反応は人それぞれだが、大半のクラスメイトは目の前に映るモニターのテストに集中している模様。
今この教室に残っている者は、一部の者を除き、皆必死なのだ。
食う為に…………
生き延びる為に…………。
死亡ニュースが届いたにも関わらず、ただ漫然と淡々と何事も無かったの様にテスト時間が進む。
が、その中でも明らかに信じられないと言った驚愕の表情を浮かべた者達がいた。
「う………嘘だろ……!?」
思わず言葉が漏れる。
「……なんやねんコレッ!?」
死に慣れ、狂った精神が戻る。
「えっ!?……え…えっ!?」
鈍った感情がクリアーになる。
「ッ! マジかよ……」
全ての感覚がソレを拒絶する。
信じたくない事実。認めたくない現実。だが、モニター左画面上に表示されたそのニュースは決して嘘の情報を流さない。
全てが事実であり、認めざるを負えない現実である。
その現実を逃避するかの如く、全てを拒絶するかの如く真っ先に純が震える唇を開く。
「健吾?……なぁ健吾!?………嘘だよな健吾? なぁ騙してんだろオイ!オイッ!?……返事しろよ健吾!!……健吾!!健吾ォォォォォ!!!!」
まるで獣の雄叫びと間違えてしまう程、純の悲痛な叫びが教室に響く。
そっちへ行くな!戻って来い!!とも聞こえる獣同士が呼び合う遠吠えの様な哀しい叫びが………。
純の悲しみなど知る由もなく、非情にも左上に表示された名前は「原田健吾」
その名前に過剰反応を示した者は、クラスの中で純、香織、真由美、雅人の四人だけであった。
麻痺………感情も感覚も精神も……死も………全て。
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