第一章 鬼面

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   そんな洋輔は、夢の中にいた。  彼にとっての幸せは、こうして眠っている事であり、これ以上の幸せは洋輔にとってあり得ない事であった。  幼い頃から、大した努力もしないで何でも出来た。  だからと言って自分を天才だと思い込み、おごり高ぶり人を見下すような事はしなかった。  だが、間違いなく天才だった。 「面倒臭いんだよね……」  何でも出来てしまうから、彼の好奇心を満足させる物は無く、寝る事に幸せを感じていた。  そうすれば、面倒臭い事は何も無い。 「ねぇ、そう言えば折原先輩って、彼女とか出来た事あるのかな?」 「えぇ、どうかな実は女に興味無さそうじゃない」  いつの間にか、図書委員は三人に増えていた。  しかし、その会話は本人が聞いていない事をいい事に、失礼極まりない事を言っている。  彼女いるのかな?  彼女とか出来た事、あるのかな?  疑問の分類上は似たようなものでも、この二つでは大きく違っていて、後者は明らかに言葉自体に悪意さえ隠っていそうだ。
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