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そんな悪意を、紗理奈は敏感に感じ取った。
だが、それを指摘すれば秘めたる気持ちを探られ、下手すれば妙な噂になりかねない。
女子高生の情報伝達能力は、田舎の集落のそれと同じ速度を有し、そこにパソコンや携帯を介在させれば、速度に加えて距離の広さまで心配しなくてはならなくなる。
それが、恋愛スキャンダルなら尚更。
「もっと、自己アピールすれば絶対にモテる筈なのにね」
「そうかなぁ、仮にモテるとしても年上からでしょ?」
「あぁ、そうかも」
紗理奈は、これにも反応した。
彼の寝姿を見る限り、母性本能をくすぐる要素は強く、同世代より年上の方が向いていると言うのも頷ける。
それが自分ならと、紗理奈は妄想し顔を赤らめるが、パソコンで書籍の検索をするフリをして、図書委員の女子に悟られないようにした。
その時、洋輔が目を覚ます。
「あっ、起きた」
図書委員の一人が、小声でそう告げた。
そんな洋輔はそれに気付きもしないで、大きく伸びをすると凝った首を回し解す。
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