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紗理奈は、複雑な心境でその会話を聞いていた。
常に洋輔を馬鹿にしている図書委員の女子達が、洋輔の事を認めるような事を言ったのは嬉しい。
だが言葉通りだとしたら、自分だけが好意を寄せていると言う立場が崩れてしまうのである。
それは、売れないアイドルや芸人を応援している、ファンの心理に近いのかもしれない。
そんな気持ちすら、洋輔は知らない。
図書室を出た洋輔は、前回と同じ教室に二人を招き入れた。
そして、二人の顔を見もしないで口を開く。
「悪いんだけど、勉強を教えるのしばらく止めようと思うんだ」
「えっ、どうして……」
「いや、まぁ、面倒臭いって言うか、教えがいが無いっていうかね」
「えぇ、でも困るぅ」
二年生の女子が、体を振りながら困惑の表情を浮かべるが、それを見る限りは差ほど困っているようには見えない。
図書委員の予測通り、目的は別にあるようだ。
「じゃあ今日はしょうがないから、携番とアドレスの交換だけしてくれませんか?」
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