第一章 鬼面

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   その女子の目的は、明らかにそれであった。  既にその女子の手には携帯が握られており、更に言えば赤外線の受信準備が終わっている。 「何それ……」 「いや、だから携番とアドレスの交換をしておけば、勉強が分からない時にいつでも聞けるかと……」 「もしかして、目的は最初からそれ?」 「いや、まぁ、えっと……」  目的を見破られた二年生の女子は、後退りしながら教室をゆっくりと出ていった。  出た直後の話し声が、教室内の洋輔の耳に届いた。 「あぁ、駄目かぁ」 「バレバレだったね」 「折原先輩、あの話し知ってるのかな?」 「先輩の携番とアドレスを携帯に登録すると、半年以内に彼氏が出来るって話しでしょ? 本人が知ってたら効力無くなるよ」  洋輔は、額に手を当てあきれ込んだ。  学校の七不思議だか年伝説並みの話しで、数分とはいえ自分の時間が削られたかと思うと、目眩を起こしそうな感覚に陥る。 「確か、うちの学校って進学校じゃなかったか?」  どこかで聞いた台詞だ。
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