第一章 鬼面

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   洋輔は自主的に早退し、昼過ぎの街へと歩き出した。  一週間前、似たような状況から不可思議な体験をする破目になり、三百年以上前から続く自分の家系が抱える使命を知った。  先週は、切り裂きジャック騒動だった。  町内で子供ばかりが切り裂かれたが、そのわりに出欠量が少ないと言う事件が勃発した。  事件は自然消滅のように終息を迎え、今は人々の興味が別の事に向かっていき、話題に登らなくなってきている。  だが、事件を終息させたのは洋輔だ。 「短刀の九十九神だったな……」  簡単に言ってしまえば、妖怪の仕業であった。  その昔、百年の歳月を過ごした道具は魂が宿り、自らの意志を持つようになると信じられていた。  それを九十九神、または付喪神と呼んでいた。  妖怪が空想の生物と考える現代人にしてみたら、「何を馬鹿な事を」と言われかねないが、実際に体験した洋輔にしてみれば、冗談じゃ済まない話しである。  そんな九十九神が、事件を起こした。 「それを、どう証明する?」
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