第一章 鬼面

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   物理的、科学的、生物学的に見ても無生物が百年の時を経て生物と変ずるなど、学者からしたら鼻で笑われる話しなのだ。  それが歴史学者や考古学者なら、まだ話しを聞いてくれそうではある。  だがそれも、九十九神を証明するには至らないだろう。  もしかしたら、ツチノコの方が信憑性が高いかもしれない。 「証明なんて、出来るはずがないな」  そんな九十九神を見た者もいなければ、捕らえた者もいない。  信じろと言う方が無理だ。  洋輔だけが、妖怪を見た。  洋輔だけが、妖怪と話しをした。  洋輔だけが、妖怪と戦った。  そして、それを打ち倒し街の平和を取り戻したのだ。それを誰かに認めてもらったり、誉めてもらいたい訳では無いが、その事実を論理的に説明できない事にむず痒さを感じる。  だが、不快では無かったのだ。  天才的な頭脳を有し、世の中の事実に対し理解出来ない事が無く、それを退屈と感じるからこそ睡眠を一番の幸せと感じるのだ。  そんな洋輔が、理解出来ない事実が存在した。
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