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むき出しの岩山の中腹、絢爛豪華な社の扉を背負い男は女と向き合っていた。
女は社の扉を背負う男を、涙ながらに見詰めている。
そして社は、禍々しい妖気を放ち今にも扉を破壊し、男の体を引き裂かんばかりの気配を漂わせる。
男の背が、ギリギリでそれを抑える。
極限まで鍛え上げられた男の肉体は、崇高なる精神を携えていた。しかし、その体には数多の痣や傷が刻まれ、それまでの戦いの壮絶さを物語る。
一方、女は祈祷師を思わせる白い装束に身を包み、艶やかで美しい黒髪には一筋の乱れも無かった。
そして、その背後には形を成さない妖の骸が、折り重なるように散らばっている。
男の名は、折原 玄幽齊。
女の名は、九条 神奈。
妖を封ずる事を将軍家より任じられた、二つの家系の伝承者である。
将軍家、つまり徳川 家宣の名を受けこの場にいるのである。
「玄幽齊さま……」
「よいか神奈。これからお前に託す物を、後の折原の子孫に必ず伝わるようにするのだ」
「玄幽齊さま、それは?」
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