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参
翌朝、洋輔と神奈は林の結界の傍らにいた。
徹夜して水晶を掘り出した訳ではなく、雲外鏡の言う通り床下の土の表面を軽くさらうと、拳大の水晶はゴロゴロと出てきた。
洋輔は、それでも小さいと床下を掘り進めると、人頭大の水晶がいくつか出土した。
洋輔としては、考古学者か恐竜の発掘をする気分を爪の先程度に感じた。
そして、水晶の重量を考慮して人頭大の物を十個程度掘り出し、掘り出しす時間の何倍もかけて林の周囲に運んだ。
この時ばかりは、リアカーでも無いかと思った。
現代社会と言うより、人間の作り出してきた数々の道具は、必要に迫られて開発されたのだろう。
正に文明の利器。
それがリアカーや大八車であっても、昨日の洋輔にしてみれば有り難みを感じただろう。
「神奈ちゃん。それで、どうしたらいいかな?」
「そうで御座いますね、単純に水晶を周囲に配置すればよろしいかと」
結界に関しては、神奈の方が専門なので洋輔としては下手に出る。
神奈は、それに恐縮しつつ答えた。
「でもさ、少し気になったんだけど水晶を持ってたら、九十九神が寄って来なかったね」
「左様で御座いますね。それに関して、後で雲外鏡に確かめます」
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