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神奈の目には、五体の中央に立つ鬼から立ち昇る禍々しい妖気が、塔のような形で見えていた。
もしも洋輔にそれが見えていたならば、妖気が東京タワーやエッフェル塔のように見えたであろう。
「真ん中の奴が、あいつだよね?」
「左様で御座います」
「体が大きくなってるし。何と言うか、ただならぬ気配を感じるね」
「はい。まるで、別の個体のような妖気の質と量を有しております」
「出来たら、他の四体を先に倒し封印してから、あいつと戦いたいけど引き離すのは難しいよな……」
神奈はそれに答えず、鏡を取り出すと鎖鎌を洋輔に差し出した。
洋輔も、それを無言で受け取る。
鎖が、小さく音を立てた。
その音を聞きながら、今度は神奈も自分の為に鉄扇を取り出すと、それを手にした瞬間に表情を強張らせる。
「神奈ちゃん?」
「まだ私の意思では、同調を制御しきれないようで御座います」
「それは、ボクも同じだから思い詰めないで。昨日同調した時の感覚を思い出して、戦いの場から距離を取ってて」
「ですが……」
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