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神奈が、表情を強張らせながら強く拳を握った。
それは洋輔を手助けする手段がありながら、容易に実行する事が出来ない自分に、歯痒さを感じてしまい自然とそうしてしまったのだろう。
「焦ると妖武具の気配が伝わり辛くなるから、落ち着かないとね。大丈夫、神奈ちゃんなら出来るよ」
「本当に、そうで御座いましょうか……」
洋輔の励ましにも、神奈の気持ちは戻らない。
その時、洋輔の頭にふとある事が過った。
洋輔が神奈を励ます。
主従の関係からしたら当然であろうし、外見的にも何の違和感も無い。
だが実際には十七歳の高校生と、三百二十五歳のいわば歴史上の人物なのである。年齢だけ見たら、励ますのは神奈の方であろう。
洋輔が薄笑いを浮かべる。
この切迫した状況でも、そんな考えに至る自分に笑いが込み上げ抑えられなかった。
「洋輔さま?」
「大丈夫、ボクらなら戦える。それに、頑張って鬼達を解放しなきゃいけないからね」
「はい。左様で御座いますね」
ようやく神奈にも、笑顔が戻ってきた。
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