439人が本棚に入れています
本棚に追加
そのあどけなく朗らかな笑みに、洋輔の気持ちも解れ鬼へと立ち向かう気持ちが強まる。
改めて、鎖鎌を握り直す。
「神奈ちゃん、いくよ」
「はい。洋輔さま」
互いに声を掛け合うと、洋輔は丘を駆け降り鬼達との距離を詰める。
神奈もそれに続くが、丘の中腹で足を止めた。
それは、洋輔の指示通りに戦いの場から距離を取り、まずは鉄扇との同調に努める為だ。
「洋輔さま……」
神奈は洋輔の背中を見送ると、鉄扇を握りしめ目を閉じると同調を試みるが、赤子の泣き声が頭の中でただ響くだけで同調する気配が無い。
それでも、神奈の気持ちは折れなかった。
一方の洋輔は迫り来る鬼に足を止めて、迎撃の体制を鎖鎌の分銅を旋回させる事で整えた。
迫り来る鬼は、四体。
「あいつは、来ないんだな」
期せずして、洋輔の望む形になった。
前回の戦いの時にも、最初は鎌鼬が配下の妖をけしかけておいて、洋輔の油断を誘い隙をついて攻撃してきた。
だが今回、あの鬼は完全に傍観を決め込む気配だった。
最初のコメントを投稿しよう!