439人が本棚に入れています
本棚に追加
洋輔は、しみじみと答える。
「この、鎖鎌だよ。あれだけの戦いだったら、体中の骨がバラバラになってもおかしくないのに、こんなにも無事なんだからさ」
「私はそのお陰で、洋輔さまの戦いを何とか見る事が出来るので御座います」
今の神奈では、傷だらけになる洋輔をまともな神経で、見守り続ける事など出来ないだろう。
それほどまでの忠誠心。
そんな神奈の気持ちを背負い、洋輔は最後の鬼へと歩を進めた。
「あの時の小僧が、ずいぶんと覚悟を決めた顔をしてるな」
鬼は、悠然と洋輔を待ち構えている。
四体の鬼の戦闘に参加したり、戦闘の直後に洋輔を攻撃すれば、容易に打ち倒す事が出来たかもしれない。
特に、鬼に封印を施している間に攻撃すれば、洋輔のみならず神奈も打ち倒せただろう。
だが、鬼はそれをしなかった。
倒されてしまった同族の体を、これ以上は傷付けたくないと言う気持ちが働いたのだろう。
本能は、大妖の支配を受け切っていない。
カラス天狗が感じてたのは、まさに事実であった。
最初のコメントを投稿しよう!