439人が本棚に入れています
本棚に追加
ダメージの蓄積がなければ、洋輔はとっくに打ち倒されていただろう。
だが、最後の決め手が無い。
洋輔の残りの体力を考えたら、せいぜい一撃を放つのが精一杯であるが、それも鬼に無防備に近い隙があってこそ決められる。
「いくらなんでも、そんな都合の良い隙なんて見せないよな……」
ダメージがあるとはいえ、鬼の方が必殺の一撃を残しているようだ。
だが洋輔が考える間も無く、鬼は金棒を振り上げて洋輔にとどめを刺しに来た。
「くっ、もう、自棄だ」
振りかぶる鬼の懐に入るべく、体勢を低く構えてから分銅を旋回させ絶対領域を作った。
どっちが、速いか。
金棒を振り下ろす速度と、絶対領域でかち上げる速度のスピード勝負。
だが、鬼の方が一瞬だけ速い。
「くっ、駄目か……」
洋輔自身が諦めたのだが、攻撃は洋輔の方が先に当たり鬼は派手に吹き飛んだ。
その腹部には、螺旋状のシワが深く刻まれている。
「何故、止まった?」
絶対領域を打ち込む瞬間、鬼の攻撃は確かに止まっていた。
最初のコメントを投稿しよう!