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洋輔は、吹き飛んだ鬼に歩み寄る。
相手が妖であるため、絶命の心配は無いが息も絶え絶えで、目も虚ろなその様は今にも息絶えそうであった。
「折原か……」
「うん」
「我は、負けたのだな」
「ボクとしては、余り勝った気がしないんだけどね」
「戦いは、結果が全てだ。大地を踏み締め、敗者を見下ろす者が勝者なのだ」
「うん……」
鬼の体が、ゆっくりと再生を始める。
一番最初に再生をを始めたのは、右手の指だった。第二間接から逆向きに反り返り、折れた骨が音を立てて再生する。
もちろん、それは洋輔の攻撃によるモノでは無い。
だが、間違いなくこの為に鬼の攻撃が止まったのだと、指の角度が物語っている。
そして、鬼は更に洋輔に語り掛ける。
「我の同胞は、これからどうなる?」
「結界に浄化の力を追加したんだ。これで、大妖の呪縛から解放される筈だよ」
「そうか……」
鬼が、安らぎの表情を浮かべて目を閉じる。
全てを悟ったような、それでいて全ての呪縛から解き放たれたような顔。
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