439人が本棚に入れています
本棚に追加
洋輔は、その顔を見て菩薩のようだと思った。
鬼は、昔ばなしや童話では悪の象徴として語られているが、日本の神社仏閣では鬼を奉っている場所もある。
この鬼も、それに値する存在だと思える。
洋輔は、鬼の肩にそっと触れてみた。
「折原よ……」
「うん」
「我が、里の者達を頼む」
「うん、分かった」
鬼は、仲間を洋輔に託すと静かな眠りについた。その様が余りに潔く、先を感じさせない事から死なない筈の妖から、死の気配を連想させた。
それを弔うように鎌鼬の鎖鎌が、鎖を揺らし小さな音を立てた。
最初のコメントを投稿しよう!