第五章 鬼の解放

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         伍    水晶が、全ての黒いモヤを浄化し弾けるように砕けた。  それは林の結界の周囲に置いた水晶で、中の鬼の全てから大妖の妖気を抜き取り、その許容量を越えた事で弾け飛んだのだろう。  続いて、最後の戦いで封じられた四体の鬼の周囲で、結界の媒体に使われた水晶が大妖の妖気を次々と浄化していく。  だが、その場に神奈の姿は無かった。  神奈の姿は、既に洋輔の傍らにあったのだ。  大地に横たえた鬼を見詰める洋輔と同じように、神奈もまた同じようにしている。  鬼は、動く気配すら無い。  そして洋輔が感じたように、神奈もこの鬼から神仏の神々しさを感じ取っていた。 「あれ、神奈ちゃんだったんだね?」  洋輔は、いびつに曲がりながら元に戻ろうとする、右手の指を見詰めながら言った。  神奈は、すぐにその言葉の意味を理解する。 「私では、御座いません」 「えっ?」 「あっ、いえ、その指に攻撃したのは私からで御座います。ですが、その攻撃は私の意思では御座いません」 「それって?」
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