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勝敗が決するその刹那、神奈の目から見ても鬼の攻撃が速かった。
神奈は洋輔の敗けを覚悟し、目を閉じた瞬間勝手に扇子が開き周囲を漂っていた、十体の九十九神を吸い込むように骨組みに封じた。
そして、それが鬼に向けて放たれた。
他のどこに当たっても、鬼の攻撃は止まらなかったであろう。
だが、金棒を握り締める右手の指に辺り、間接が逆に曲がった事で一瞬だけ攻撃の手が止まった。
お陰で、洋輔は勝つことが出来たのだ。
「鬼女に助けられたんだね」
「きっと、鬼女からのお礼で御座いましょう」
「そうか、そうかもしれないね」
普段の洋輔なら、そのような非現実的な事を認めたりはしないが、妖界の存在その物が非現実的であるから、簡単に認めてしまった。
事実、鬼達を大妖の呪縛から解き放ちつつあるのだから、鬼女がそうしたとしても納得が出来る。
我が子の恩人を、助けない母親などいない。
それは、妖界だろうと人間界だろうと関係ない、紛れもない現実なのだから。
洋輔は、再び鬼に視線を送る。
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