第五章 鬼の解放

47/54
前へ
/291ページ
次へ
   勝敗が決するその刹那、神奈の目から見ても鬼の攻撃が速かった。  神奈は洋輔の敗けを覚悟し、目を閉じた瞬間勝手に扇子が開き周囲を漂っていた、十体の九十九神を吸い込むように骨組みに封じた。  そして、それが鬼に向けて放たれた。  他のどこに当たっても、鬼の攻撃は止まらなかったであろう。  だが、金棒を握り締める右手の指に辺り、間接が逆に曲がった事で一瞬だけ攻撃の手が止まった。  お陰で、洋輔は勝つことが出来たのだ。 「鬼女に助けられたんだね」 「きっと、鬼女からのお礼で御座いましょう」 「そうか、そうかもしれないね」  普段の洋輔なら、そのような非現実的な事を認めたりはしないが、妖界の存在その物が非現実的であるから、簡単に認めてしまった。  事実、鬼達を大妖の呪縛から解き放ちつつあるのだから、鬼女がそうしたとしても納得が出来る。  我が子の恩人を、助けない母親などいない。  それは、妖界だろうと人間界だろうと関係ない、紛れもない現実なのだから。  洋輔は、再び鬼に視線を送る。
/291ページ

最初のコメントを投稿しよう!

439人が本棚に入れています
本棚に追加