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そこで、鬼が呟く。
「折原よ、随分と甘い事を言うのだな……」
「だけど……」
「戦いとは、時に非情にならねばならん。我は、武具に封じなければならんのだろう?」
「そうだけど……」
「我を、武具に封じ大妖との戦いに連れていけ。我が妻も、それを望んでいよう」
「妻って?」
「九条の娘が、我が妻を封じた。良いか、我が子を守る為に身を投じた妻と共に大妖の元へ、良いな?」
そこまで言って、鬼は黙り込む。
洋輔と神奈は、鉄扇を見詰めていた。まさか、最後の鬼と鉄扇に封じた鬼女が夫婦であったなど、夢にも思わなかった。
そこで考えるのは、鬼の子から両親を奪ってしまうと言う事実。
「洋輔さま、鬼の望みは……」
「うん。鬼の子は、大丈夫かな?」
「これほどまでに、強い両親の子で御座います。例え、一体になろうと強く生きましょう」
「そうだね、里の鬼達もいるしね」
洋輔は、手にしていた鎌鼬の鎖鎌を神奈の鏡に戻す。鎌鼬は、全体が淡い光で点滅していた。
それは、妖武具の使用限界の証。
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