439人が本棚に入れています
本棚に追加
神奈は、それを洋輔には告げず鎖鎌と入れ替えに、預かっていた金棒を洋輔に差し出す。
幻幽斎との戦いで幾度となく見た、妖武具の使用限界。
それが、今回鬼との戦いがギリギリだったと物語る。
「神奈ちゃん、頼むね」
「かしこまりました」
神奈は、小走りに鬼を挟んで洋輔の対面の位置につく。
そして、鏡を胸元に掲げると目を閉じ呪文を唱えた。
「九条の名に於いて命ず、妖よ折原に支えし武具と共に戦場を切り裂く刃となれ」
呪文の詠唱後、神奈と洋輔を真円の光が繋ぐ。そしてその内側が浄化され、清らかで澄みきった空間となる。
鬼の体から邪気が抜け、続いて鬼の精神が抜け出していく。
「妖よ、その全てを妖武具と化せ」
鏡から放たれた光は、金色の帯と化し鬼の精神を包み込むと、そのまま金棒の中に吸い込まれた。
辺りを、静寂が包み込む。
洋輔は、金棒右手に握り直し意識を集中する。
その右手から伝わってきたのは、大草原に寝転んだ時の若草の香りだった。それは、あくまでもイメージである。
最初のコメントを投稿しよう!