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神奈に聞いた鉄扇から流れ込むイメージは、赤子の泣き声であった。
同じ鬼と言えど、男女の違いも含めて個体差は、ここにまで現れるのかと洋輔は思う。
そして、草原の若草の香りにどのようにして同調すれば良いかと、鎌鼬の鎖鎌の時以上に困惑した。
それも、当然である。
香りに同調など、いくらイメージとは言え想像すら出来ない。
洋輔の先祖である幻幽斎は、新たな妖武具も瞬時に使いこなしたと言うが、まったく常軌を逸した話しである。
「洋輔さま……」
「うん、やっぱりすぐには使えないや」
「そうで御座いますか」
「取り合えず、鬼達の様子を見に行こうか」
「はい、そう致しましょう」
そう言って二人は、四体の鬼達の元に行ってみた。
それぞれの結界を形成する水晶は、黒いモヤが漏れ出す程にまでなっている。
「こっちは、まだみたいだね」
「左様で御座いますね。でしたら、林の方は浄化が終わっているのでは無いでしょうか」
「そうだね、行ってみよう」
そうして、丘に向けて歩き出す。
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