第五章 鬼の解放

51/54
前へ
/291ページ
次へ
   神奈に聞いた鉄扇から流れ込むイメージは、赤子の泣き声であった。  同じ鬼と言えど、男女の違いも含めて個体差は、ここにまで現れるのかと洋輔は思う。  そして、草原の若草の香りにどのようにして同調すれば良いかと、鎌鼬の鎖鎌の時以上に困惑した。  それも、当然である。  香りに同調など、いくらイメージとは言え想像すら出来ない。  洋輔の先祖である幻幽斎は、新たな妖武具も瞬時に使いこなしたと言うが、まったく常軌を逸した話しである。 「洋輔さま……」 「うん、やっぱりすぐには使えないや」 「そうで御座いますか」 「取り合えず、鬼達の様子を見に行こうか」 「はい、そう致しましょう」  そう言って二人は、四体の鬼達の元に行ってみた。  それぞれの結界を形成する水晶は、黒いモヤが漏れ出す程にまでなっている。 「こっちは、まだみたいだね」 「左様で御座いますね。でしたら、林の方は浄化が終わっているのでは無いでしょうか」 「そうだね、行ってみよう」  そうして、丘に向けて歩き出す。
/291ページ

最初のコメントを投稿しよう!

439人が本棚に入れています
本棚に追加