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玄幽齊は、甚平のような衣の懐に手を入れるとある武具を取り出した。
緑がかった木製の柄の両端に、槍の穂先が着いた武具は槍と呼ぶには、あまりにも短く武具として奇妙だった。
仏教等の法具に似たような物もあるが、その形状は確実にそれとは違っており、やはり槍と判断するのが妥当であった。
「河童の仕込み槍……」
神奈が、そう呟く。
仕込み槍と言うのだから、やはりそれは槍なのであろう。玄幽齊は、それをしばらく見詰めていた。
「こいつを子孫に残すのだ」
「ですが、玄幽齊さま。その仕込み槍を使えば、大妖を滅ぼす事が出来るのではありませんか?」
「そりゃあ、無理だ」
「そんな……」
「俺の力は残り僅かだ、大妖と戦うだけの余力はねぇ。だから、俺の体を使い大妖を封じるしかない。だが、封印なんてモンはいずれ朽ち果てるもんだ」
玄幽齊は、それを見越した上で後世の子孫に、その仕込み槍を残そうと言うのである。
折原家の歴代の伝承者は、妖を倒す為に妖武具という武器を使用してきた。
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