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いつまでも腕を受け取らない神奈に、玄幽齊は腕を持ち直し股の間に挟み込むと、槍を突き刺し中に封じ込めた。
身の丈六尺を軽く超える玄幽齊の腕は、まさに鬼の腕のように見える。
「神奈、よいな。お前はこれを持ち、人間界に戻り人としての幸せを求めるのだ」
「玄幽齊さま……」
「折原家当主、玄幽齊より九条 神奈へ最後の命を下す」
その場に、凛とした空気が流れる。
神奈は無意識に背筋を正し、玄幽齊の言葉を受けようと構えた。
それは長年に渡り脈々と続いてきた、折原家と九条家の主従関係を刻み付けた血が、無意識にそうさせるのだ。
そこに神奈の意志は無い。
「我が身に大妖を封じ、社の扉にも封印を施すのだ。そして、人間界へ戻れ」
「…………」
玄幽齊は、その沈黙を肯定と認識すると目を閉じ何かの呪文を詠唱した。
すると、その身が扉の内側に沈み込む。
「神奈、今だ」
社の中から玄幽齊の声が響き、それに動かされるように神奈は懐から鏡を取り出した。
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