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壱
立頭大学付属高校の図書室。
静まり返った室内の奥の奥で、小さな寝息を規則的に放ち何人たりとも寄せ付けない、不思議なオーラを放っている。
美術書が並ぶコーナーの、本棚の隙間に設置された椅子に浅めに腰掛け、軽く腕を組んだ状態で俯き加減で眠っている。
制服を着ているから当然この学校の生徒であり、彼がこの場所を特等席としている事は、一部の人間の間では周知の事実なのである。
だが、そんな彼の本当の姿を知る者は校内にはいない。
折原 洋輔。
この学校の生徒としては、かなり優秀な部類に入るはずの彼であるが、校内一存在感が薄い男でもある。
そんな彼を、密かに注目している人物がいた。
それは、図書室の司書を勤める女教師、大久保 紗理奈である。
この不況のご時世に、図書室専任の司書を置くのも珍しそうだが、超がつく程の進学校で県立図書館並の蔵書を誇るここでは、そうでもしないとこれだけの書籍を管理仕切れないのである。
「彼に、何があったの?」
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