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この十日間、紗理奈は洋輔を見ていた。
それは好奇心であり、顔が好みの年下の男への興味から来る、淡い恋心からであった。
そして彼の変化に気が付いたのは、校内の女性で紗理奈ただ一人であった。
「寝姿なのに、何か大きな事を成し遂げたような、出来る男の雰囲気が出ちゃってるのよねぇ」
洋輔の頭頂部に、紗理奈は投げ掛けた。
俯いている上に、天然パーマの長い前髪が隠しているから、表情はおろか寝顔さえ見えない。
だが、その眼力は確かだった。
この十日間で、洋輔は普通の高校生では経験する事の出来ない、いや人類の誰しも出来ないような経験をした。
妖怪を退治し、妖界という異世界の平和を守る使命を得た。
それだけでも、突拍子も無い事だ。
「先生。折原先輩の事ずっと見てるけど、もしかして……」
「そんなんじゃ無いわよ」
洋輔の経験した事など関係無く、午前の授業が終わり昼休みになって図書委員で二年生の女子が、目敏く紗理奈の視線に気付く。
慌て紗理奈は視線を外す。
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